分散と標準偏差の違い|計算例で分かる「ばらつき」とn−1の意味

平均が同じでも、全員が似た値なのか、一部の値が大きく離れているのかは分かりません。分散と標準偏差は、この平均からの散らばりを表します。分散はずれを二乗してまとめ、標準偏差はその平方根を取って元の単位へ戻します。

5つの数値を変えられる統計教材で、平均が同じでも標準偏差が違うことを試せます。

平均4分でも、二つの集団は違う

架空の読書時間を比べます。Aは2・3・3・4・8分、Bは4・4・4・4・4分。どちらも合計20分、平均4分ですが、Bは全員同じ、Aは人によって差があります。

最大値−最小値の「範囲」なら、Aは6分、Bは0分です。両端の差を手軽に見られますが、中にある値を使いません。全ての値を使って平均の周りの散らばりを見るのが、ここで計算する分散です。

分散の計算は、引く・二乗する・平均する

読書時間平均4分との差差の二乗
2−24
3−11
3−11
400
8416
合計20合計0合計22

平均との差をそのまま足すと、プラスとマイナスが打ち消されて0になります。二乗してから合計すると22。この5個のデータそのものの分散は、22÷5=4.4分²です。絶対値を使う別の指標もありますが、ここでは二乗を使っています。

全員4分のBでは、平均との差が全て0なので分散も0です。値が大きく離れるほど二乗の寄与が大きくなります。Aの8分という値だけで二乗和22のうち16を占めることからも、離れた値の影響が見えます。

標準偏差は、元の単位で読むための平方根

4.4の平方根は約2.0976なので、標準偏差は約2.10分です。分散の「分²」から、読書時間と同じ「分」へ戻りました。分散と標準偏差は二つの無関係な指標ではなく、片方が決まればもう片方も決まります。

「平均からの距離の平均」と言いたくなりますが、絶対値を平均した数とは違います。今回、ずれの絶対値の平均は(2+1+1+0+4)÷5=1.6分です。標準偏差2.10分との違いは、二乗してから平均し、最後に平方根を取る順序にあります。

nで割る式とn−1で割る式がある理由

手元の5人の散らばりを記述するなら、上では個数n=5で割りました。一方、無作為に抽出した標本から、母集団の分散を推定するときには、条件の下で偏りを補正するためn−1で割る「不偏分散」をよく使います。今回なら22÷4=5.5分²です。

標本自身から計算した平均は、その標本に合わせた中心です。その周りの二乗のずれをnで割ると、独立・同一分布などの前提の下で、母分散を平均的に小さく見積もります。n−1という補正は、この推定上の性質に対応します。「どちらの式が正しいか」より、記述なのか推定なのかを確認します。

目的・計算分散平方根
5人のデータを記述:22÷54.4分²約2.10分
母分散の推定に使う不偏分散:22÷45.5分²約2.35分

不偏分散の平方根が、そのまま母標準偏差の不偏推定量になるわけではありません。また、表計算ソフトでは母集団用と標本用で関数が分かれることがあります。結果が少し違ったら、まず分母と関数の目的を見ます。

標準偏差から言えないこと

平均4分±標準偏差2.10分は、全員が入る範囲ではありません。8分の人は外側です。「約68%が平均±1標準偏差に入る」という目安も、正規分布のような条件に基づく説明であり、任意の5個の数にそのまま当てはめる規則ではありません。

標準誤差も別の言葉です。標準偏差が個々の値の散らばりを扱うのに対し、平均の標準誤差は、標本を取り直したときの平均の変動を扱います。調査人数を増やすと推定が安定する場合があっても、対象となる人々の個人差自体が消えるわけではありません。

比べる前に、単位と集団をそろえる

分を秒へ直すと標準偏差は60倍、分散は60²=3,600倍です。単位の違う数値をそのまま比べて「ばらつきが増えた」とは言えません。対象者・測定期間・記録の細かさもそろえてから読みます。

確認問題:全員の読書時間に10分を足したら、標準偏差は?

変わりません。平均も10分増え、平均との差は全て同じままです。反対に全員の時間を2倍にすれば、差も2倍になり、分散は4倍、標準偏差は2倍になります。

参考資料

本文の人物・場面・数値は、説明用に作成した架空の例です。

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