「この町には、昔から伝わる伝説があります」。そう聞くと、何世代もの人が語ってきた景色を想像します。ところが、その物語が広告のために作られたものだったら、受け取り方は少し変わるでしょう。
フェイクロアは、作られたり作り替えられたりしたものを、昔からの民間伝承であるかのように提示することを問題にした言葉です。FakeとFolkloreを組み合わせた名前で、民俗学者リチャード・M・ドーソンが広めました。インディアナ大学のドーソン資料案内
目次
新しい物語なら、全部フェイクロア?
小説家が伝説を題材に物語を作る。観光地が新しいキャラクターを考える。それだけで、偽の伝承と呼ぶ必要はありません。
区別したいのは、作品としての創作と、その由来の説明です。「私が作った物語」と紹介する場合と、「昔からこの土地で語られてきた話」と紹介する場合では、読者に伝えている情報が違います。
この言葉の歴史には、民間で語られる物語と、作家や商業活動によって整えられた物語を、どう扱うかという議論があります。Cultural Analysisのドーソン論考
ポール・バニヤンが、議論の題材になった
よく取り上げられるのが、巨大な木こりポール・バニヤンです。木こりの間で語られた話、新聞に載った話、広告や本で広まった話が重なり、何を民間伝承と呼ぶかが議論されました。
森林史の研究誌には、1906年の新聞に載った物語や、その後の広告による普及が紹介されています。口頭の語りと出版・商業活動が交わった例として見ると、単純な「本物か偽物か」以上の面白さがあります。Journal of Forest Historyのポール・バニヤン研究
登場人物が一人でも、その人物について語られる話は、時代や語り手によって違います。有名なキャラクターの由来を追うと、物語が育つ道のりが見えます。
フォークロア、創作、都市伝説との違い
| 言葉・形 | 主に見るところ |
|---|---|
| フォークロア | 人々の間で共有され、伝えられる語りや習慣など |
| 創作作品 | 作者が作った作品としての内容 |
| フェイクロア | 伝承として示された由来と、作られ方のずれ |
| 都市伝説 | 身近な出来事として語られ、広まる現代の話 |
これは、すべての話を別々の箱へ入れるための分類ではありません。創作された話が人々に語られたり、伝承が映画へ作り替えられたりもします。どの言葉を使うかで、注目する場所が変わります。
「昔から」の一言が、物語を強くする
ここからは、架空の例で考えます。ある町の広報が「月を見ると、なくした物を思い出す猫」の物語を作ったとしましょう。「町の新しい創作」と紹介すれば、読者はその世界を楽しめます。
同じ話を「江戸時代から伝わる言い伝え」と紹介すると、町の歴史を知ったつもりになる人も出てきます。内容は変わっていないのに、由来の説明が、歴史としての重みを加えているのです。
フェイクロアという言葉は、物語の面白さだけでなく、それがどんな看板をつけて届けられるかにも目を向けさせます。
由来を追うと、読み方がもう一つ増える
気になる話に出会ったら、「誰が最初に書いたのだろう」「どの地域で語られていたのだろう」と考えてみます。同じ文が何度も転載されているのと、違う人の語りが残っているのでは、伝わり方が違います。
出どころを調べることは、物語を冷やすだけの作業ではありません。語り手が加えた工夫、広告で広まった部分、時代ごとの変化が見つかることもあります。物語そのものと、物語が広がる過程を、二度楽しめるのです。
面白さと、由来は別々に味わえる
新しく作られた話にも、人に語りたくなる力があります。長く伝わる話にも、誰かの工夫が重なっています。だからこそ、創作としての魅力を楽しみながら、歴史として説明されている部分は別に見られます。
「いつ作られたのか」だけでなく、「どう語られ、どんな形で共有されたのか」。フェイクロアを知ると、伝説の後ろにいる語り手にも興味が向きます。
物語を別の角度から読むなら、ブアメードの血のあらすじと怖さもどうぞ。短い物語と謎を楽しみたい方は、作者の謎解きアプリも遊んでみてください。
