デコヒーレンスは、対象と環境の相互作用により、対象だけを見たときに重ね合わせの干渉が現れにくくなる過程です。量子が突然「普通の物」に変身するというより、どこまでを一つの系として追うかが重要になります。
読み:でこひーれんす / 英語・関連表記:quantum decoherence 量子デコヒーレンス
周りへ、経路の情報が伝わる
二つの経路が重ね合わされた対象を考えます。周囲の光や粒子が経路に応じて違う状態になると、対象と環境の間に相関ができます。環境まで細かく追わず、対象だけの統計を見ると、干渉の寄与が抑えられることがあります。
誰かが意識して見たことは必須ではありません。環境に情報が記録されるような相互作用があれば、人が結果を知らなくても対象だけの記述は変わり得ます。
情報が消えた、とはどの範囲で言う?
対象と環境を合わせた閉じた系では、通常の量子力学の時間発展を考えられます。その中の一部分しか見ないと、全体へ広がった位相の関係へアクセスできなくなる、という構図です。
「宇宙全体から量子の情報が完全に消えた」とただちに結論する必要はありません。対象の温度や大きさだけで時間が一つに決まるわけでもなく、どんな相互作用があるかによって効き方が変わります。
猫が一つの結果になる問題は、すべて解けた?
デコヒーレンスは、日常的な大きな系で干渉を観測しにくいことや、安定した状態が選ばれやすいことを説明する重要な仕組みです。しかし、なぜ各回に一つの結果を経験するのかという測定問題を、これだけで解決したとみなすかは別の論点です。
「見えない干渉を説明する」と「一つの解釈だけが正しいと証明する」を分けましょう。シュレディンガーの猫の記事では、箱の設定と、量子力学の解釈の問題を整理しています。
量子計算では、なぜ困る?
量子情報を利用する手順では、制御した重ね合わせやもつれを保ちたい場面があります。環境へ意図せず情報が漏れると、必要な干渉を利用しにくくなります。そのため隔離、制御、誤り訂正などが重要になります。
ただしデコヒーレンスと、単なるエネルギーの減少は同義ではありません。位相の関係が乱れることと、励起エネルギーが失われることを分けると、何を保とうとしているのかが明確になります。