「この案に賛成しないなら、改善する気がないんだね」。そんな言い方では、案の一部を直したい人や、別案を持つ人の立場が消えてしまいます。偽の二分法は、あるはずの選択肢を落としてしまう議論の形です。
偽の二分法とは
偽の二分法とは、実際にはほかの可能性があるのに、二つの選択肢しかないように扱って結論を迫る誤りです。偽のジレンマ、白黒思考の議論とも呼ばれます。ただし、心理状態としての白黒思考を診断する言葉ではありません。
二択で話すこと自体は誤りではありません。問題は、その二つで本当にすべてを尽くしているかです。ある会議の採決で賛成・反対の二つから投票する制度と、考えられる改善案が二つしか存在しないという主張は別の話です。
会議の例を、選択肢に戻してみる
次は自作の会話例です。
「アプリの通知を増やすか、利用者を増やすことを諦めるか。どちらかだ」
通知を増やすことが一つの施策だとしても、初回の案内を直す、操作を分かりやすくする、紹介ページを改善するなど、別の方法も考えられます。通知を増やさない選択から、利用者を増やす意欲がないとは言えません。
どう返せば議論を戻せる?
「利用者を増やす目的には賛成です。通知以外の案も比較しませんか。まず初回画面を直す案を検討したいです」と、目的と手段を分けて提案できます。
本当の二択との見分け方
| 確認すること | 例 |
|---|---|
| 範囲が決まっているか | このスイッチは現在オンか、オフか |
| 別の程度や時期があるか | 全面導入以外に、小規模な試行はできないか |
| 目的と手段が混ざっていないか | この手段への反対を、目的への反対と扱っていないか |
二つの案が互いに両立しないだけでは、二つですべてとは限りません。「今日会う」と「明日会う」は同時には選ばない予定でも、来週会う、今回は見送るといった候補が残ることがあります。
藁人形論法との違い
藁人形論法は、相手の主張を別の弱い主張へすり替えて攻撃することです。偽の二分法は、選択肢の範囲を不当に狭めること。一つの発言に両方が重なる場合もあります。
たとえば「通知の回数を見直したい」という意見を「利用者を増やしたくない」と言い換え、その二択を迫れば、主張のすり替えと選択肢の切り捨てが同時に起きています。
論破の名前より、抜けた案を出す
相手に「それは誤謬だ」とだけ返しても、話は進みにくいものです。「この二つ以外に、こういう案もあります」と具体的な候補を足すと、何が不足しているかを共有できます。
もちろん、時間や予算の制約で実行できる案が限られる場合はあります。制約を確認し、本当に候補から外れる理由があるかを検討しましょう。選択肢を無限に増やすことではなく、結論に関係する案を落とさないことが目的です。
出典:Internet Encyclopedia of Philosophy「Fallacies」False Dilemma