ストレンジアトラクターとは?同じ場所を巡るのに、同じ道を繰り返さない

ストレンジアトラクターは、力学系の長時間の振る舞いが近づく集合のうち、フラクタルのような複雑な幾何を持つものです。混沌に見える動きにも、形のあるまとまりが現れる。名前の「奇妙さ」は、その両立にあります。

読み:すとれんじあとらくたー / 英語・関連表記:strange attractor 奇妙なアトラクター

アトラクターは、物を引く磁石?

アトラクターは、状態の時間変化が近づく集合を指す言葉です。磁石のような物体が実際に引いているとは限りません。摩擦のある振り子が最後に静止する点や、自励振動が続く閉じた軌道など、単純なものもあります。

何に近づくかを描く空間には、位置だけでなく速度なども座標として使います。これが位相空間です。実際の部屋の中で粒が飛ぶ軌跡と、状態の地図を混同しないようにします。

ローレンツの蝶のような図

ローレンツ系は三つの変数の微分方程式からなる模型です。よく知られたパラメータでは、状態の軌道が左右二つの翼のような形を巡ります。片方を何周してからもう片方へ移るかは、簡単な繰り返しにはなりません。

それでも、軌道がどこへでも無制限に散らばるわけではありません。限られた集合の近くにとどまり、細部を拡大すると入り組んだ構造が現れます。この「不規則だが、何でもありではない」という点が面白いところです。

形が分かっても、次の位置は難しい

アトラクターの大まかな形や、長い時間の統計が分かることと、遠い将来の一時点を正確に当てることは別です。カオスでは初期状態の小さな違いが増幅され、個々の予測が難しくなり得ます。

ただし、ストレンジという幾何の特徴と、初期値への鋭敏さという力学の特徴は概念上同一ではありません。フラクタル状だから必ずカオス、と一文で片付けず、どの定義を使っているかを確かめます。

写真の複雑さだけでは判定できない

ぐちゃぐちゃの線を描いただけで、アトラクターを示したことにはなりません。どんな更新規則があり、どの初期条件から、どれだけ長く追ったかが必要です。美しい図を鑑賞する入口から、その図がどう作られたかへ進むと、言葉の意味がはっきりします。

参考資料