初めて見たときは何とも思わなかったロゴが、何度か目にするうちに親しみやすく感じられる。聴き慣れない曲が、いつの間にか気に入っている。こうした経験を考える手がかりが、単純接触効果(mere-exposure effect)です。ザイアンス効果という呼び方でも紹介されます。
同じ対象に繰り返し接することが、その対象への好意的な評価につながる現象を指します。ただし、「何度でも接触すれば、誰にでも必ず好かれる」という法則ではありません。
目次
「知っている」と「好き」は、同じではない
見覚えがある → 前にも見た、と認識できる
親しみを感じる → なじみのある対象として感じる
好きだと思う → 好意的に評価する
ロゴの名前を当てられることと、その商品を好きになることは違います。「よく見るから覚えた」だけで単純接触効果を確かめたとはいえません。反対に、接触した回数を正確に覚えていなくても評価が変わる可能性があり、研究では何を測っているかが重要です。
ザイアンスの研究と、その後の検討
Zajoncの1968年の論文は、意味を持たない語や記号などへの接触と評価の関係を扱い、繰り返し接すること自体が態度に関わるという仮説を検討しました。「mere」は、説得の説明や報酬を与えることとは区別して、対象に触れることに注目した言葉です。Zajonc(1968)Attitudinal effects of mere exposure
一方、Montoyaらの2017年のメタ分析では、好意の変化は、増え続ける直線というより逆U字に合うパターンが報告され、刺激の種類や提示条件による違いも検討されています。接触が多ければ多いほどよい、と単純には言えません。2017年のメタ分析
現実の広告や人間関係では、接触するたびに内容や気分、状況も変わります。そこで起きた好意の変化を、接触回数だけの効果と断定するのは難しい点にも注意が必要です。
自作例:アプリのアイコンを何度か見る
架空のアプリ「ことばの庭」を考えます。初日は名前しか分からず、数日後に遊び方の画像を見て、さらに後で友人の紹介を見たとします。やがて安心して試したくなったとしても、原因は一つではありません。
| 変わったこと | 考えられる理由 |
|---|---|
| アイコンに親しみが出た | 繰り返し見たことが関係した可能性 |
| 使い方が分かった | 説明や画像から新しい情報を得た |
| 信頼できそうと思った | 友人の評価が判断材料になった |
これは理解のための作例で、実験結果ではありません。実際に確かめるなら、提示回数以外の条件もそろえて比較する必要があります。売上やインストールが増えたとしても、それだけで単純接触効果が原因だとは決まりません。
ハロー効果・バンドワゴン効果との違い
「見慣れている」「見た目がよい」「人気がある」は別の情報です。自分が何に好感を持ったのかを言葉にすると、まだ確かめていない性能や品質まで評価していないかにも気づけます。
発信で生かすなら、接触の負担も見る
名前やアイコン、説明の言葉を一貫させれば、別の場所で見ても同じ作品だと分かりやすくなります。ただし、同じ告知を大量に送るより、初回は概要、次は遊び方、その次はよくある疑問というように、読むたびに役立つ内容を用意するほうが、発信の目的を説明できます。
効果を確かめる際も、表示回数だけでなく、内容を読まれたか、試してもらえたか、通知を止められていないかまで見たいところです。これは発信を改善するための提案で、研究が示した必勝手順ではありません。
よくある疑問
何回会えば好きになってもらえる?
万人に通じる回数はありません。相手の評価や事情、接触の内容が違うためです。繰り返しの連絡を正当化するために、この効果を使うことはできません。相手が望む距離を確認することが先です。
知名度が高ければ、品質も高い?
知っている名前は判断の手がかりになりますが、必要な機能や品質まで保証しません。「見覚えがある」と「自分に合う」を分けて確かめましょう。
関連する心理現象を読む
心理現象の一覧から、似ている効果の違いを探せます。よく見た例を「よく起きること」と感じる仕組みは、利用可能性ヒューリスティックで扱います。