ハプログループとは?DNAでたどれる祖先と、たどれないこと

DNA検査で「あなたは○○系統です」と言われたら、祖先の正体がすべてわかった気になりそうです。でも、祖先は一本の線ではありません。ハプログループは、その大きな家系図の中にある特定の線をたどる手がかりです。

ハプログループは、遺伝情報の系統グループ

ハプログループとは、共通の祖先に由来する遺伝的な特徴を共有するグループです。祖先研究では、ミトコンドリアDNAやY染色体にある変化を手がかりに、系統を分類します。

大まかなたとえとしては、長い文章が何世代もコピーされるうちに、ある枝で一文字が変わり、その変化を持つコピーがさらに増えるようなものです。複数の特徴を比べると、どの枝から分かれた系統なのかを探れます。文字どおり文章が入っているわけではありませんが、枝分かれを考える図としては役立ちます。

ミトコンドリアDNAは母系の線をたどる

ミトコンドリアは細胞内にある小さな構造で、独自のDNAを持っています。ミトコンドリアDNAは通常、母親から子へ受け継がれます。そのため「母、その母、そのまた母……」という母系の線を調べる手がかりになります。米国国立ヒトゲノム研究所の解説でも、母系の祖先を追う用途が紹介されています。

ここでいう母系は、「母親側の親戚全員」ではありません。母方の祖父にも祖先はいますが、その人の母系の線は自分のミトコンドリアDNAをたどる線とは別です。家系図の左半分がまるごとわかる、という意味ではないのです。

Y染色体は父系の線をたどる

Y染色体を使った祖先検査では、通常は父から息子へ受け継がれる特徴を調べます。「父、その父、そのまた父……」という父系の線が対象です。本人にY染色体がなければ、その検査を本人のDNAだけで行うことはできません。

母系と父系は対になるように見えますが、どちらも祖先全体のごく一部です。二本の線がわかっても、家系図にある残りの枝が消えるわけではありません。

家系図を3世代描くと、意味が見えてくる

紙の中央に自分を描き、その上に両親、さらに上に祖父母を描いてみましょう。親の欄は2つ、祖父母の欄は4つ、曾祖父母の欄は8つになります。同じ人が複数の欄に入る家系もありますが、欄の数としてはこのように広がります。

その図に、母から母へたどる線を一本引きます。次に、父から父へたどる線を一本引きます。ハプログループが調べる線と、家系図全体の広がりの違いが目で見えるはずです。「一つの系統がわかった」と「祖先のすべてがわかった」は、かなり違う話です。

祖先の地域割合を出す検査とは何が違う?

常染色体を調べる祖先検査は、もっと広い範囲の遺伝的なつながりを対象にします。企業などが持つ参照集団のデータと比較し、特定の地域の集団にどの程度似ているかを推定するものです。

MedlinePlusの祖先検査の説明によると、結果は使うデータベースなどによって違い、参照データが増えると変化することもあります。「地域が何%」という数字は、国籍や文化を測定した値ではありません。

例えば、ある人がどの言語で育ったか、どんな料理に親しんだか、どの社会に属していると感じるかは、DNAの系統名だけでは決まりません。遺伝的な系統と、その人のアイデンティティは、重なる部分があっても同じものではありません。

結果を見るときの3つの確認

  • 母系・父系・常染色体のうち、何を調べた結果か。
  • どの参照集団と比較しているか。
  • 系統の分類なのか、地域との類似度の推定なのか。

ハプログループは、遠い祖先とのつながりを考える魅力的な手がかりです。一本の線を丁寧にたどりながら、その周りに大きな家系図が広がっていることも忘れずに眺めたいですね。

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