ランダウアーの原理は、情報の消去という論理的に元へ戻せない操作に、物理的な代償が伴うことを示します。標準的な条件では、未知の1ビットを初期化するときの平均的な放熱の下限はkBT ln 2です。
読み:らんだうあーのげんり / 英語・別名:Landauer principle ランダウアー限界
0でも1でも、同じ0に戻す
初めの値が0でも1でも、操作後には必ず0になる記憶を考えます。結果の0だけから、以前どちらだったかは分かりません。二つの可能性を一つにまとめる点で、これは論理的に不可逆な操作です。0を1へ、1を0へ交換する反転なら、結果から入力を戻せるので事情が違います。
式の条件を一緒に読む
kBはボルツマン定数、Tは熱浴の絶対温度、ln 2は2の自然対数です。等しい確率の0と1を持つ古典的な記憶を、熱浴と接しながら確実に同じ状態へ戻す標準的な設定で、この下限を考えます。温度は摂氏ではなくケルビンで扱います。
初めから値を知っている場合、確率に偏りがある場合、誤りを許す場合、別の系との相関を使う場合には、情報と資源の条件を改めて整理します。「何か1文字を削除すれば、必ず同じ熱量が出る」という日常操作の計算式ではありません。
論理の矢印と、物理の熱をつなぐ
実際の記憶は、磁気状態や電荷、粒子の位置などで作られます。二つの井戸の左右に粒子を置いて0と1を表す模型なら、左右のどちらにいた粒子も同じ側へ集める操作が初期化に対応します。記号を消すことも物理的な装置の状態変化として扱えるのが、この原理の面白さです。
Bérutらの2012年の実験は、二重井戸の模型を使って、ゆっくりした消去で平均放熱がこの限界へ近づくことを調べました。特定の実験結果を、すべてのコンピューターがすでに限界の効率で動く証拠と読むことはできません。
すべての計算に、同じ最低発熱がある?
不可逆な消去と、論理的に可逆な操作を区別します。さらに現実の機械には、抵抗、制御、誤り訂正など別の損失があります。ランダウアー限界は、機械全体の消費電力をそのまま予測する式ではありません。
マクスウェルの悪魔が記録を使って分子を選別した後、その記録を消して装置を一周させる場面に戻ると、情報が熱力学から切り離せない理由が見えてきます。何が分かったかだけでなく、どの記憶を元に戻したかが重要です。