不可逆過程とは?元へ戻せないのは、物だけでなく周囲も含めた変化

不可逆過程は、系と周囲の両方を、何の変化も残さず元へ戻すことができない過程です。冷めた飲み物を再び温められても、そのために周囲へ別の変化を残すなら、元の冷却が可逆だったことにはなりません。

読み:ふかぎゃくかてい / 英語・別名:irreversible process 可逆過程 reversible process

元の温度へ戻すだけでは足りない

熱い飲み物を部屋に置くと、熱が移って温度差が小さくなります。ヒーターで飲み物の温度を戻せても、電源のエネルギーを使い、周囲も変えています。物の見かけの状態だけでなく、関わったもの全体を元へ戻せるかが基準です。

摩擦・混合・有限の温度差

滑る物体が摩擦で止まる、異なる気体が混ざる、温度差のある二物体の間で熱が流れる。こうした典型例では、全体としてエントロピーが生成されます。エネルギーは消滅せず、仕事へ戻しにくい形へ分配されるという見方が役立ちます。

系のエントロピーだけなら、熱を外へ渡すことで減る場合があります。したがって「すべての物のエントロピーが必ず増える」とは言いません。熱の出入りによる移動と、不可逆性による生成を分け、周囲まで含めた収支を取ります。

ゆっくりなら、必ず可逆なのか

可逆過程は、状態の差を限りなく小さくして、逆向きにも進められる理想です。しかし摩擦があれば、ゆっくり動かしても散逸は残り得ます。平衡に近い状態をたどる準静的な過程であることは、可逆であることと同じではありません。

例としてピストンを少しずつ動かしても、接触面に摩擦があれば、往復で仕事の差が出ます。速度を小さくしたという情報だけで、熱力学的な可逆性を判定できないわけです。

時間を逆向きにした映像との違い

割れたコップが集まる逆再生を想像すると方向性はつかめますが、不可逆性の定義は映像の奇妙さではありません。どの状態を制御でき、周囲へ何を残すかを指定して考えます。微視的な法則の時間反転と、巨視的なエントロピー生成を区別すると、時間の矢への入口にもなります。

可逆と不可逆を比較

過程元へ戻す条件模型の例
可逆系と周囲の双方に変化を残さない理想摩擦なしで限りなく小さな差により進める
不可逆系だけを戻しても周囲に変化が残る有限の温度差による熱移動、摩擦

参考資料