変位電流とは?電子が渡らない隙間にも、磁場の式がつながる

変位電流は、時間とともに変わる電束などを、磁場を生む式の中で電流に対応する項として扱うものです。真空のコンデンサーの隙間を、電子が導線と同じように流れるという意味ではありません。

読み:へんいでんりゅう / 英語・別名:displacement current

充電中のコンデンサーで考える

二枚の金属板を隔て、導線から充電するコンデンサーを考えます。導線には伝導電流が流れますが、理想的な真空の隙間を電子が横切ることはありません。一方、板の電荷が増えるので、間の電場は時間とともに変化します。

磁場を求めるアンペールの法則を伝導電流だけで使うと、同じ輪を縁に持つ面でも、導線を横切る面と板の間へ曲げた面で答えが食い違います。変位電流の項を加えることで、この不整合を解消できます。

電荷の移動と、場の変化を区別する

真空での変位電流は I_d=ε₀ dΦ_E/dt と表せます。Φ_Eは面を貫く電束、ε₀は真空の誘電率です。ここで効いているのは電場の大きさそのものではなく、電束が時間とともに変わることです。

理想化した平行板コンデンサーでは、充電中の隙間の変位電流が導線の電流と対応します。充電が終わって電場が時間的に一定なら、この項はゼロになります。電場が残っているから電流も流れ続ける、とは言えません。

物質の中と、電磁波へのつながり

誘電体中では電束密度Dの時間変化を使う表現が便利で、分極に関わる応答も含めて考えます。したがって「変位電流には物質の応答が一切ない」という言い方も正確ではありません。どの場の量を使っているかが大切です。

電場の変化と磁場の関係、磁場の変化と電場の関係を合わせると、電磁波の伝わり方につながります。光はその一種です。変位電流は、途切れた導線を架空の電子でつなぐ説明ではなく、電荷保存と場の方程式を整合させる項なのです。

参考資料