毛玉の定理は、球面の各点に接する矢印を連続に配置すると、どこかで矢印の長さが0になることを示します。「毛の生えた球を、つむじも乱れもなく全部とかせない」という比喩で知られる位相幾何の定理です。
読み:けだまのていり / 英語・別名:hairy ball theorem ハリネズミの定理
毛は、球面に接する矢印の比喩
ここで考える毛は、球の表面に沿った向きと長さを持つ接ベクトルです。球から外へ突き出す矢印ではありません。隣り合う場所で向きや長さが急に飛ばない、という連続性を要求したうえで、どこでも長さが0でない配置が可能かを問います。
赤道沿いに流しても、極が残る
地球儀の緯線に沿うように矢印を並べると、赤道の近くでは自然に見えます。しかし北極と南極では同じ置き方をそのまま続けられません。球をある軸の周りに回す速度の場を考えれば、両極の速度が0になる模型が得られます。
この例は定理全体の証明ではありません。別の巧妙な並べ方なら解決できそうに見えても、連続で接するという条件を守る限り、どこかの0を避けられないというのが定理の強さです。
ドーナツ形なら、事情が違う
トーラスの上では、輪を回る方向へ途切れず矢印を置き、すべての点で0でない接ベクトル場を作れます。球面とトーラスの差は、局所ではどちらも滑らかな面でも、全体のつながりが違うことから現れます。オイラー標数との関係を知る入口になります。
風や髪の話へ、そのまま広げない
地表の風を理想化して、球面上の連続な水平ベクトル場とみなすなら、どこかに速度0の点があるという示唆が得られます。しかし現実の風には高さ方向の動き、地形、時間変化などがあります。定理だけから台風の個数や場所は決められません。
人の頭も、髪のない部分や境界、毛の立ち上がりを含むので、そのまま完全な球面上の接ベクトル場ではありません。名前の面白さを楽しみながら、球面・連続・接する・0でない、という四つの条件を押さえると、数学としての意味が残ります。