山の向こうから吹いてきた風なのに、涼しいどころか暖かい。フェーン現象は、山を越えて吹き下りる風が風下の気温を押し上げる現象です。空気が上がるときと下がるときを分けると、不思議な温度差の理由が見えてきます。
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山が空気を温めるヒーターになる?
山自体が熱を足している、と考える必要はありません。空気の塊が上昇すると、周囲の気圧が下がり、膨張して温度が下がります。下降すると逆に圧縮され、温度が上がります。周囲と熱をほとんど交換しない変化を、断熱変化と呼びます。
「熱を受け取らなければ温度は上がらない」と思っていると、ここが意外です。温度の変化には、空気を圧縮する仕事も関わります。
雲ができると、冷え方が変わる
湿った空気が上がって冷えると、水蒸気が凝結して雲粒になります。そのとき放出される潜熱が、上昇による冷却を一部埋め合わせます。雨などで水分を失った空気が風下へ下りると、上昇時とは違う割合で暖まり得ます。
ただし「山を越える風には必ず雨が必要」と覚えると狭すぎます。上空の暖かい空気が風下へ下りるなど、実際のフェーンには複数の仕組みがあります。
同じ高さへ戻っても、温度が同じとは限らない
考え方だけを確かめる模型を作ります。山の風上で20℃、上昇中の冷却が6℃、風下への下降中の昇温が10℃だったら、風下では24℃です。差は4℃になります。
この数字は観測値ではありません。上昇中ずっと同じ割合で冷えるわけでもなく、雲ができる高度、湿り具合、風の経路によって結果は変わります。足し引きの前に「どの区間で、どんな空気が動いたか」を確認します。
「乾く」は、水蒸気が全部消える意味ではない
空気が暖まると、同じ水蒸気量でも相対湿度は下がり得ます。フェーンでいう乾燥を理解するときは、水蒸気量が減る変化と、温度が上がって相対湿度が下がる変化を分けるのがポイントです。
熱い日なら、すべてフェーン?
日射で地面が暖められること、暖かい空気が流れ込むこと、都市の影響も気温を変えます。高温という結果だけでは、原因を一つに決められません。山に対する風向、雲、上空の空気などを合わせて調べます。
用語を知る楽しさは、天気の原因を一語で言い切ることより、「山のどちら側で何が起きたのだろう」と景色の読み方が増えるところにあります。