二人とも会いたいのに、片方が北口、もう片方が南口で待っている。目的が同じでも、行動が一致するとは限りません。調整ゲームは、相手の選択に自分の選択を合わせることが得になる状況を考えるモデルです。
北口と南口、どちらで待つ?
二人は同時に北口か南口を選び、選ぶ前には連絡できないとします。同じ場所なら会えて各2点、違う場所なら会えず各0点です。数字は満足度を単純化した評価で、駅での行動を測った実験結果ではありません。表は「あなたの点、相手の点」の順で読みます。
| あなた\相手 | 北口 | 南口 |
|---|---|---|
| 北口 | 2、2 | 0、0 |
| 南口 | 0、0 | 2、2 |
相手が北口なら、自分も北口を選ぶ方が得です。相手が南口なら、自分も南口に変えた方が得です。つまり、いつでも北口が正解というわけではなく、相手についての予想が選択を変えます。
ナッシュ均衡が二つある理由
北口・北口では、相手を北口に固定して自分だけ南口に移ると、2点から0点になります。相手側にも同じことが言えるため、誰も一人だけの変更では得をしません。南口・南口も同様です。この二つが、この表の純粋戦略ナッシュ均衡です。
「均衡が分かる」と「二人がどの均衡を選ぶかが分かる」は別です。両方が北口を選ぶと思い込めば会えますが、あなたが北口、相手が南口にそろうと思っていたら失敗します。なお、確率を使って選ぶ混合戦略まで含めれば、各入口を半々で選ぶ均衡もあります。ここでは具体的な場所を一つ選ぶ場合を中心にしています。
相談・目印・初期設定は何を変える?
「時計台のある北口で」と先に約束できれば、選択をそろえる手がかりになります。全員が知っている目立つ場所も候補になりますが、同じ目印を想像する保証はありません。新しい参加者には、その常識が共有されていないかもしれません。
共同編集でファイル名を統一する場合も、どの方式が絶対に優れるかより、全員が同じ方式を使うことが重要な場面があります。規則を一か所に書き、変更日を知らせると、相手の行動を予測しやすくなります。ただし、変更にかかる手間を誰が負担するかは、別の利害の問題です。
囚人のジレンマ・チキンゲームと比べる
この待ち合わせ例では、一致している相手を出し抜いても得になりません。囚人のジレンマでは、相手が協力していても、自分だけ非協力へ変える誘因があります。チキンゲームでは、相手が強硬なら譲る、相手が譲るなら強硬に出る方が得になるため、同じ行動へそろえる構造とも異なります。
現実では入口によって歩く距離が違うなど、そろえたい希望と、どちらにそろえるかの対立が重なることがあります。この表だけで「話し合えばすべて解決する」と結論づけるのは早計です。まずは選択肢と各人の評価を明らかにします。
考えてみよう:北口なら3点、南口なら2点だったら?
一致した場合の点を二人とも北口3点・南口2点へ変えても、不一致が0点なら純粋戦略の均衡は二つ残ります。南口にいる相手を固定すると、自分だけ北口へ行くと0点だからです。よりよい一致点があっても、二人が同時に移るための調整が必要になります。
参考:Stanford Encyclopedia of Philosophy:Game Theory。本文の数値・日常場面は、特記のない限り説明用の作例です。